ピル処方とは

ピルのイメージ写真

当クリニックでは、避妊や月経移動を希望する方にピル処方を行っています。これらで処方するピルは、主に低用量ピル、アフターピル(緊急避妊薬)になります。

低用量ピル(OC)とは

エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)の2種類のホルモンが合わさった経口避妊薬が低用量ピル(OC:Oral Contraceptive)です。使用する際は、この錠剤を毎日一錠服用していきます。
なおピルは、これまで様々な種類の薬が開発されてきましたが、その中でもピルに含まれるホルモンの量が少ないのが低用量ピルです。

低用量ピルによる避妊の仕組みですが、エストロゲンは月経初期から分泌されるホルモンで、卵胞を発育及び排卵させて、子宮内膜を妊娠に備えて厚くさせるという働きがあります。
そしてプロゲスチンというのは、排卵期以降に分泌されるホルモンで、エストロゲンの働きで厚くなっていった子宮内膜を抑え、妊娠に備えて安定化させるという作用があるほか、卵胞の発育を妨げるという働きもあります。
この卵胞の発育を妨げるプロゲスチンを月経初期から作用させるというのが低用量ピルです。
これによって子宮内膜を厚くすることが困難になって、避妊効果が発揮されるようになるのです。正しく服用していけば、その効果は、ほぼ100%とも言われています。

副作用について

なお低用量ピルを服用することでいくつかの副作用やリスクがみられることがあります。
具体的には、服用開始後1〜2週間程度は、頭痛、倦怠感、吐き気のほか、少量とはいえ不正性器出血をきたすことがあります。
また、血栓症や心筋梗塞を発症させるリスクが高くなることも考えられます。

また、低用量ピルは、血圧の高い方(高血圧症)、血栓症の既往あるいはリスクの高い方、高度な肥満の方、35歳以上で1日15本以上喫煙する方、LDL(悪玉)コレステロール値の高い方、強い片頭痛のある方などは服用することができません。心当たりのある方は、事前にご相談ください。

月経移動でも使用

また低用量ピルは、単に避妊のために使用するだけでなく、月経(生理)を早くする、あるいは遅くするといった月経移動を目的に用いることもあります。
例えば、月経予定日に旅行や大切なイベント、受験、スポーツ選手で大事な試合があるといったことなどで、できるだけ月経を避けたいという場合に用いることもできます。
月経を早くさせる場合と遅くさせる場合で使用方法が異なります。

月経を遅らせる場合

月経予定日の5~7日前から低用量ピルを服用します。
その後は、月経が始まってもかまわないとされる2日前まで飲み続けてください。
ただ限度はありますので、服用期間は最長でも14日以内にします。ただこの場合は可能性として、嘔吐・吐き気、倦怠感などの症状が副作用として起きることがあります。

月経を早める場合

月経を予定日より早めたい場合は、月経開始3~7日目から低用量ピルを服用していきます。
最低でも7日間は服用し続け、月経が始まってもかまわないとされる2日前まで飲み続けます。
早める場合は、ピルによる副作用は起きにくいとされているので、アスリートの場合は遅らせるよりもパフォーマンスは向上しやすくなります。

このほか低用量ピルは上記の目的以外にも、卵巣がん・子宮体がんといった婦人科がんなどの発症リスクを下げるほか、月経困難症や過多月経などの月経異常などにも効果があるとされているので、これらの治療目的で使用されているケースもあります。

緊急避妊ピル(モーニングアフターピル)とは

避妊をしないでセックスをしてしまった、あるいは避妊具を使用していたものの何らかのアクシデントがあって失敗したという場合に妊娠回避の手段として使用されるのが緊急避妊ピル(モーニングアフターピル)です。

これは無防備な性交が行われてから72時間以内に服用する必要があります。この黄体ホルモン(レボノルゲストレル:LNG 1.5mg)を主な成分とした薬剤を用いることで、排卵を遅延させ、受精卵の着床を防ぐために子宮内膜を急激に変化させるという作用が働くようになります。なお妊娠阻止率は約85%になると言われています。

また服用することで起きるとされる副作用につきましては、悪心(気持ちが悪い)、頭痛、腹痛といったものが一時的にみられることはありますが、1回のみの服用になることもあって、重篤な症状が報告されたことはありません。

なお緊急避妊ピルは、正しく服用していたとしても妊娠をしない可能性が100%ではなく、また効果の有無については数日から数週間後にくるとされる月経で初めてわかりますので、予定月経日から1週間以上遅れている場合や心配な点がある場合は、一度ご相談ください。