「葉酸についての解説 2024年版」
- 2024.07.07
今日東京都知事選挙が行われようとしています。どなたが選ばれるのでしょうか?とても楽しみにしています。
さて今回は
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葉酸について解説していきたいと思います。
葉酸とはビタミンBの仲間で血液を作るのに関係したり、タンパク質の代謝を助ける働きがあります。妊娠中にはたくさんの血液がつくられるため、より多くの葉酸が必要になります。
葉酸を摂ることの重要性について知られるようになってきていると実感するのですが
では
実際の葉酸摂取量はどのくらいなのでしょうか?
令和元年厚生労働省発表のデータから引用してきました。
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令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要より
妊娠可能年齢の女性に対する葉酸は1日400μg摂取することをしています。
上のラインが目標ラインとすると実際に葉酸の摂取量が足りていなのがわかるかと思います。これらの葉酸は食事で摂取している数値と考えられますが、
では妊娠したら食事量を増やせばいいのでしょうか
それについてはっきりとしたデータはありません。
食事で吸収されるポリグルタミン酸型葉酸は約50%と言われていてさらに葉酸は熱や水に非常に弱いため調理の段階ややり方で多くが失われると考えられているからです。
サプリメントの葉酸は人工で作られたモノグルタミン酸型葉酸といわれますが約85%が吸収されるといわれています。
ですので厚労省や日本産科婦人科学会としては妊娠希望あるいは妊娠可能年齢の女性に対する葉酸は「サプリメントで1日400μg補充することを推奨しています。」
さらにややこしいのですが葉酸を分解する時にメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)に働きで葉酸を変換するのですがその働きの活性で日本人の場合CC型といって充分分解できる人の割合は約35%である程度活性のあるCT型が約48%、活性のないTT型が16%で約64%の人が活性が弱いというデータがあります。
当院ではサプリメントですでに400μg摂取していらっしゃる方にもさらに追加して合計800μgの摂取をお勧めしています。
特に葉酸の代謝にはビタミンB2、B6、B12などの補酵素群の働きも重要で、すでに鉄と葉酸(400μg)のサプリメントを服用している人は葉酸(400μg)入りのマルチビタミンサプリメント(当院推奨)の併用をお勧めしています。
最近葉酸サプリメントでも800μgが販売されていますがそれが良いと思います。
最も重要なこととして葉酸が不足すると赤ちゃんに無頭蓋症(無脳症)、脳瘤や二分脊椎といって背中やお尻にコブの様な神経管閉鎖障害が起こりやすいとされています。
他にも最近になって口蓋裂、早産、常位胎盤早期剥離、低出生体重、産後うつなど最近になって多くの妊娠、出産、胎児など周産期に関わる良い効果の可能性を示唆する発見が報告されています。
葉酸補充の副作用としては喘息、喘鳴、アレルギー疾患への関連が言われていましたが関連性はないと結論づけられています。(産婦人科ガイドライン 産科編2023)
あとてんかん合併の妊婦さんがてんかんのお薬を常用されていると思いますがそのようなかたがたにも葉酸は積極的に摂取することをお勧めしています。(日本神経学会によるてんかん診療ガイドライン推奨です)
話がそれますが「てんかん」のお薬については妊娠したら気をつけなければならないことがいくつかあります。(もちろん処方されている脳神経科の先生はご存知のはずですが)当院でご相談も可能です。お電話でご連絡ください。
あと無頭蓋症や二分脊椎の出産経験があるママにはいつも言うのですが
そのような場合には「市販のサプリメントでは全く足りません」
ので当院にご相談ください。無頭蓋症や二分脊椎の赤ちゃんを出産したことがあるママには私が大学病院で指導していた頃は『次の妊娠では妊娠前から葉酸を通常よりも多く摂る必要があるので注意して』といつもママや主治医の先生にしっかり言っていたものですが実際に妊娠してご来院されると「葉酸は飲んでいません」とか「市販のサプリメントを服用しています」とおっしゃる方がほとんどでした。
無頭蓋症や二分脊椎の赤ちゃんを出産したことがあるママに対して現在の産婦人科ガイドライン (産科編2023)では以下のように記載があります。
- 次の児の再発の可能性は10倍以上になる
- 妊娠前から医師の管理のもと葉酸を1日4〜5mg服用することで再発するリスクの低減が期待できる。
- 服用する期間は妊娠前から妊娠11週6日まで。それ以降は400μgに変更する
もう15年以上前に実際に経験した症例ですが某有名大病院で妊婦健診を受けていて妊娠後期に入って私の前任の施設にいらっしゃった患者さまですが、それまでに無頭蓋症の診断がついていなかったのも当時驚きでしたがその時を含めて2回連続して無頭蓋症の赤ちゃんを妊娠されたカップルを経験しています。2回の妊娠ともに葉酸は通常の400μg内服されていたものの悔やまれた症例です。その次の妊娠では葉酸を1日5mg内服していただいて無事に次回ご出産されたわけですが葉酸の重要性を当時強く認識させられました。
ご参考までに無頭蓋症の診断は我々の施設では出生前検査の一つのNIPTをお受けになるママでは検査前の必須確認事項の一つとして妊娠10週時点で超音波検査で確認をおこなっています。特別なことはしていませんしその確認に有する時間は頭蓋骨が正常に存在する場合には約10秒ほどです。実際に当院へNIPT検査にご来院された方の中に無頭蓋症の症例は2例ありました。かかりつけで診断はもちろんついていないのでショックだと思いますがそもそも検査を受ける意味が変わってきますので大切なことと考えます。
当院ではそのようなことを避けるためにNIPTなどの検査を受ける前にエコー検査による最低限の確認は必須項目と考えています。
少し話がそれてしまいましたが
さらに葉酸の代謝にはいわゆる悪玉アミノ酸の「ホモシステイン」の代謝に関連していて血圧上昇や動脈硬化、血栓形成に関係すると言われています。男女や年齢に関わりなく永く摂取することが健康寿命を延長する上で重要と考えています。
さていかがでしたか 葉酸は無頭蓋症、二分脊椎、脳瘤に効果が期待できます。上手に利用して健康寿命を伸ばすることをに貢献できればと考えます。
出典
- 令和元年 国民健康・栄養調査結果 令和元年厚生労働省
- 産婦人科診療ガイドライン 産科編2023
- 産婦人科の進歩 Vol.76 No.1 2024「葉酸サプリメント摂取は周産期予後を改善する up to date」
文責 よりおか胎児クリニック 依岡寛和
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