「カンジダ外陰腟炎について」

  • 2025.02.05

当院では胎児ドックを専門に診療を行なっていますが妊婦さんや婦人科の患者様にもたびたび「カンジダになったかも」「最近かゆみがひどくて」という方がいらっしゃいます。

人には言いにくくてドラッグストアなどで塗り薬や軟膏を買いに行って使用してもあまり効果がないという方も多い様です。

今日はそんなカンジダ腟外陰炎の原因、治療、対策についてご紹介いたします。

普段の外来診察では伝えきれないことも多く診察後の治療効果を最大に活かすこと、再発予防の点でご参考にしていただければ幸いです。

この疾患はそもそも珍しいものではなくて女性性器感染症の中で頻繁にみられる病気で約75%の女性が生涯で少なくとも1回はかかると言われています。その原因菌の大部分はカビの一種でCandida albicans(C.albicans)で他にはCandida glabrataなどがあります。この菌は皮膚や腸管内にもともと存在する菌が直腸から肛門に移った菌が腟内に入り込み、さまざまなきっかけで発症すると考えられています。

通常はこのような菌が腟内に入り込んでもラクトバチルス(Lactbatillus .sp 乳酸桿菌)と呼ばれる菌などに代表されるいわゆる善玉菌が腟内を弱酸性に保ってこれらの悪玉菌が増えないようにバランスを保っています。しています。ですが後で出てくるさまざまな要因で一度そのバランスが壊れると悪玉菌が増殖して健康な女性でもかかる可能性のある疾患といえます。

症状は腟あるいはその周囲のかゆみ、白い酒かす様のおりもの(白いモロモロしたカッテージチーズ様ともいわれる)、外陰部の腫れやヒリヒリ感、熱感、排尿時痛、性交渉での痛みなどの症状が出てきます。

発症する誘因、原因は? 抗菌薬内服後(最も多い)、妊娠、糖尿病、消耗性疾患(末期がん、エイズ、肝不全など)、化学療法、ステロイドの服用、免疫抑制剤使用、放射線治療、通気性の悪い下着の着用、不適切な腟内自己洗浄、性交渉などが挙げられます。

治療 腟洗浄や塗り薬で通常軽快します。中には再発しやすいあるいは難治性の場合もあるので病院で相談しましょう。再発しやすい方は定期的に医療機関を受診しましょう。

再発を防ぐには

  • 外陰部を清潔かつ乾燥に保つ 通気性の良い下着を着用する、湿った下着などはすぐに着替えることで清潔かつ乾燥を保つことが大切です。おりものシートはまめに取り替えましょう。症状が治まるまで性交渉は控えて、外陰部を掻かない。入浴時に石鹸で洗いすぎるとかえって治りにくく刺激の強い石鹸に使用は避けましょう。すでに炎症を起こして痒みや痛みがひどい場合は外陰部をぬるま湯でやさしく洗うだけでいいでしょう。排便、排尿時は前から後ろに拭き取るようにしましょう。そして腟内の自己洗浄は行わないようにしてください。
  • 抗菌薬(抗生物質)の使用 体内の善玉菌を減少させ、カンジダの増殖を助長することがあります。よく副鼻腔炎、腎盂腎炎などの感染症で抗菌薬を長く服用されている場合やその後に症状が出てくる場合があります。他には最近増えている梅毒の治療中などにも注意が必要です。それらの病気はしっかり治療した上でカンジダへの対応も行う必要があります。
  • 食事について 腸内細菌を悪化させる食品 糖分(特に白砂糖などスイーツやジュースなどに含まれる)や精製された炭水化物(白パンや白米)は控えるようにしましょう。アルコールは腸内環境を悪化させカンジダを助長すると言われています。腸内細菌を整える食品 ヨーグルトやキムチ、納豆などの発酵食品 プロバイオティクスサプリメント あとニンニクやオリーブオイルココナッツオイルはカンジダを抑制する働きがあると報告されています。
  • ストレス管理 ストレスは免疫力を低下させるため、適度な運動やリラクゼーション法を取り入れてストレスを管理しましょう。

他にも妊娠中にカンジダに感染して赤ちゃんに産道感染したら顎口瘡(がこうそう)といって赤ちゃんの口の中に発症することがあるので注意が必要です。

余談ですが腸内環境は最近とても注目されている分野です。腸の働きは学校では食べ物を消化して栄養や水分を吸収する臓器と教えられたかと思います。実際それは正しいのですが他にも重要な働きがあることがわかってきました。そのうちの一つが腸内細菌が免疫に関わっているということです。腸内に1000種類以上存在すると言われている細菌叢が私たちを有害な細菌やウイルスから体を守る役割をになっていることがわかってきました。他にも便秘や下痢などの胃腸症状のみならずお肌の具合やアンチエイジング、生活習慣病の予防などの立場からも腸内環境を整えるいわゆる腸活を実践する人が増えてきていますよ。

患者様の中には体に合わないお薬を塗りすぎたせいか外陰部の皮膚が変色してしまっている方もお見かけしますのでお早めに医療機関を受診されることをおすすめいたします。

いかがでしたか 今回はカンジダ外陰腟炎の特徴、治療、予防の取り組みについて解説しました。ご参考にしていただければ幸いです。

参考文献 日本産科婦人科学会 診療ガイドライン 婦人科外来編 2023

文責 依岡寛和

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